「上皇ともあろう御方が売国の罪を犯され・・・この後は、配流にて永の蟄居となりましょうが。
民の心は離れかけております。民の信望を失えば、もはや大和朝は続きませぬ。
番の一族は国賊に堕とされ、夷狄に攻め落とされるまでもなく、内乱にて滅びまする」
大和朝の滅亡。
それがどんな事態を引き起こすか、小鳥にも想像がつく。
新たに覇者にならんとする貴族や各地の豪族の台頭。
内乱に乗じて侵略をもくろむ夷狄の存在。
乱世。力あるものが弱いものを虐げる、弱肉強食の世。
ふたたび秩序や安寧を取り戻すには、何十年、いや何百年とかかるかもしれない。
そうさせてはならない。
けれど、そのためには————
「四皇子様が自ら総大将として軍を率い、戦に勝利しなければなりません。
民の心と、この国の安寧を取り戻すために」
それが、日嗣の皇子たる彼らに課せられた使命。
昂然と顔をあげ、嶮しい道を歩む彼らの姿が見える。
常寧殿で女房たちに囲まれてこうして座っているだけの自分との、なんという違い。
体を折り曲げ、畳に手をついて突っ伏す。己の無力さを呪いながら。
背のなかほどまで伸びた髪が、さやさやと畳にこぼれ落ちた。
民の心は離れかけております。民の信望を失えば、もはや大和朝は続きませぬ。
番の一族は国賊に堕とされ、夷狄に攻め落とされるまでもなく、内乱にて滅びまする」
大和朝の滅亡。
それがどんな事態を引き起こすか、小鳥にも想像がつく。
新たに覇者にならんとする貴族や各地の豪族の台頭。
内乱に乗じて侵略をもくろむ夷狄の存在。
乱世。力あるものが弱いものを虐げる、弱肉強食の世。
ふたたび秩序や安寧を取り戻すには、何十年、いや何百年とかかるかもしれない。
そうさせてはならない。
けれど、そのためには————
「四皇子様が自ら総大将として軍を率い、戦に勝利しなければなりません。
民の心と、この国の安寧を取り戻すために」
それが、日嗣の皇子たる彼らに課せられた使命。
昂然と顔をあげ、嶮しい道を歩む彼らの姿が見える。
常寧殿で女房たちに囲まれてこうして座っているだけの自分との、なんという違い。
体を折り曲げ、畳に手をついて突っ伏す。己の無力さを呪いながら。
背のなかほどまで伸びた髪が、さやさやと畳にこぼれ落ちた。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)