「わざわざ宮中を辞す理由でもあったのかしら?」
小鳥も気になって聞いてみる。


そうでございますねえ・・・と言いかけて、かづらがしまったという顔をする。

もしやと、小鳥の左胸の奥がきゅうと縮み上がる。
大和国に来て、早五ヶ月。だいぶ知識も増えてきた。


宮中には、禁忌とされるものが多くある。穢れという言葉に集約される、禁忌。

その最たるものが死と、それにまつわる血。出産でさえ、血の穢れといわれ宮中を辞して実家で産むのが慣例だ。

死病もしかり。死病を得たものは———


そんなまさか———


「姫様、いらぬことを申しました」
かづらが深々と頭をさげる。

「いえ、それより・・・赤の宮様は本当にだいじょうぶなのかしら」


「私邸に下がってしまわれますと、どうされておりますことやら・・・」
かづらも肩を落とす。