そのとき、ふいに耳に飛び込んできた、低い声。
ピン!としっぽをたてて、おれは目を見張った。
……なんと。
なんと、この押し問答の状況に、タカシが現れやがったんだ。
すっげー不機嫌そうな顔して。
……そんだけじゃねえ。
タカシのやつ、あかねの腕つかんで。
そのまま引っ張って、あかねのこと、連れ去って行っちまったんだよ。
「え……っ、た、貴志くん!?」
あっという間の出来事だった。
焦るあかねの声と、どんどん遠くなる二人の後ろ姿。
……うそ、だろ。
もう、おれ、顔面蒼白。
おれは黒猫だけど……ってそんなこと言ってる場合じゃねえ。あかねが危ない。
もうだれに見られても知ったこっちゃねえ!!
おれは窓から校舎内に飛び込むと、脇目も振らずに、全速力で廊下を走った。
たしか、2人はこっちに走って行ったはず……
……いた!!
ギリギリ。かろうじて見えた。
掛け札のない教室にすべりこんでいく、あかねとタカシの後ろ姿。



