ひとりぼっちの卒業式と思われた場所はあっという間に、結婚式場と披露宴会場になってしまった。

敦美は感激のあまり、ぽろぽろと涙を流していく。


「敦美、そんなに花嫁さんが泣いてたらだめでしょ。
ほら、お化粧少しだけだけど、しておきましょう。」


「ママ!!どうして・・・。」


「私だけじゃないわよ。キャサリンもきてくれたし、冬弥もいるわ。
お父さんと直弥は仕事の都合で来られないんだけど、メッセージを持ってきたのよ。」


「ありがとう。」


「さぁ、俺たちも配置につこうぜ。」


「そ、そうね・・・あの、享祐さん。
私・・・うれしい。」


「もう泣くなよ。
俺は中溝と校長にかけあってみただけだ。

そもそも俺のせいで、みんなと同じ卒業式ってわけにはいかなくなったんだから。」


「そんなことない。
私、すごくいい思い出をいただけたわ。」



「そういってもらえると、うれしいよ。
それに、このあとは新婚旅行でゆっくりとね。」


「えっ!?旅行まで用意してたの?」


「あ、ああ。すぐ近所の温泉だけどな。
何かあったときに困るからさ。

まぁ、自然の中で温泉に入ってのんびりと・・・って。
いくつだ・・・俺たちは!って思うかもな。」


「そんなの気にしないわ。
享祐さんやみんなの思いがうれしくて。

私、だんだん出産が怖くなってきたんだけど、がんばれる気がしてきた。」


「その意気だ。これからこういうダンナの面倒もみてくれないとな。
奥さん!」


「はい・・・それにしても、なんかブーケとかトスできないくらい大きな花束なんだけど・・・。」


「うん、トスしたいなら、そこのちっちゃいやつ投げてくれればいいよ。
大きな花束は、俺からの気持ちさ。
もっともっと大きな花束にしてやりたかったが、こけちゃったら大変だからな。」


「うふふふ。もう・・・そんな優しい言葉はよそでは使わないでね。」


「敦美にしか言えるわけないだろ。」