夜になり、消灯前に寮にもどってきた敦美は、同室の洋子にお茶をいれてもらいながら少し話をした。


「お疲れさま。勉強に花嫁修業に絵のモデルによくがんばってるね。」


「だって、やらなきゃいけなくなっちゃったから。」


「だけど、敦美・・・顔が大人っぽくなったと思うよ。」


「そう?」


「うん、ママの顔っていうのかな。
私なんかこれから女子大生になって、何をしようかななんて考えてるけど、敦美はステキな旦那様がいて、ママになる予定もあって必死に準備してるでしょ。

すぐそばで見てるとうらやましいわ。」


「そういうものかなぁ・・・やっぱり?」


「うんうん。だって敦美からはいっぱい幸せオーラが出てるんだもん。
今日は何やったの?っていう質問にいっぱい答えられる敦美はステキだよ。
私、応援する。私だけじゃないよ、寮の友達や後輩たちまでみんな敦美を応援したいって。」


「そんな・・・照れくさいなぁ。
最近、みんなと顔合わせてなくて・・・ちょっぴりさみしい。
それに、卒業したらみんなバラバラになっていくし。」


「仕方ないよ。だけど、大人になっても連絡は取り合おうね。
じゃ、そろそろ遅いからおやすみ。
敦美もあったかくして寝なきゃだめよ。」


「うん、そうする。」


そして敦美が寝ようとして携帯を見ると享祐からメールがきていた。


「明日、君のお客さんがアトリエまできてくれることになった。
学校が終わったらすぐにおいで。」


(お客さん?誰かしら・・・)


敦美は楽しみにして寝てしまった。


翌日も学校で授業を受けたあと、享祐のアトリエへ行った敦美だが・・・何やら声が複数している。


「やぁ、敦美。久しぶり・・・」


「あ・・・直弥兄様・・・。」


「はじめまして。私、キャサリンです。
息子は万須美ママがみてくれています。」


「あ・・・あなたが直弥兄様の・・・そうなんだぁ。」


「会社を整理して父さん家の近くに住まいを構える。
もちろん、キャサリンの実家とも行き来はするけど・・・よろしくな。
で、まさか敦美がママになるとはね・・・すごく驚いたよ。

それに、あの先生が夫でパパっていうのもね。」


「何か?」


「いや、敦美が世話になったけれど、まさか高校生をママにしてしまうとは。
やるねぇ・・・君も。」


「そういうお兄さんもご家族そろって貫録がついたとか?」


「むっ・・・。まぁね。キャサリンは料理上手なもので。」


「ねぇ、息子さんの写真とかないの?」


「ああ、これだ。携帯にな・・・。」


「うわぁ!!かわいい。目がぱっちりだぁ。
すごい。うらやましい。」


「もうすぐ敦美も仲間入りだよ。
とにかく、挨拶がてら寄ってみたのさ。
いろいろすまなかったな。
幸せになれよ。」


「うん。ありがと。キャサリンさんも直弥兄様をよろしくね。」


「ハーイ、こっちのことまたいろいろ教えてくださいね。」



直弥とキャサリンはすぐに帰っていってしまったが、敦美は2人がいろいろ乗り越えてきたことがわかった。

キャサリンのすばらしい日本語にしても、必死で勉強したのだろう。
自分も勉強しなきゃ・・・と元気づけられた。