その質問についての答えは享祐の口からはきけなかったが、享祐が激しく敦美の胸に顔をうずめ、強く抱きしめてくることから敦美には答えがわかっていた。

初めて感じる体のあちこちの痛みのようなもの・・・そしてどんどん熱を帯びていくのがわかっていく。
はずかしいと思いながらも嫌らしい音が狭い部屋に響きわたっていくのに、体が享祐に従順に従っていく。

まるでアトリエでヌードのモデルをしているかのような、物静かで情熱的なそんな気持ちになっていく。
真剣な顔で絵筆を動かしている享祐の表情・・・それ以上の荒々しさも感じる。

「俺を見て・・・肩に手をまわして力を抜いて。」


「はい・・・あっ・・・ああっ!」
(今、彼は重要なところを描いているんだわ。情熱が伝わってくる・・・享祐さんの息遣いも、手にかかる力も、すべて私だけに・・・私だけにくれる宝物・・・ステキ。あったかいよ。)


「大丈夫かい?動ける・・・?
動けるなら、ここを引き上げて、君のご両親のところへ行く準備をしたいんだが。」


いきなり、現実にもどっている享祐にぼうっとする頭で敦美は頷いた。

享祐はそんな敦美を笑いながら見つめ、体を気遣いながら手をひいて車に乗せ、ペンションを後にした。


享祐からの電話にとくに驚いたのは冬弥だった。


「なっ!本気か、享祐!
そこまで、無理しなくてもさぁ・・・忙しいんだろ?」


「仕事は待たせておけばいいさ。
それより、俺は結婚しないと敦美が触れさせてくれないんだ。
仕事どころではないよ。
だから、明日ご両親のところで話をさせてもらうよ。」


「ちょ、ちょっと、享祐?」
(切っちまったか。はぁ・・・享祐は俺の弟になるつもりかぁ・・・いや、兄貴だろ。
直弥と同い年だったよな・・・おいおい。
うるさい兄貴が2人なんて勘弁してくれよぉ!)


敦美の親に会う前夜、敦美はふと気になったことを享祐に尋ねた。

「ねぇ、コンドーム使ってるのにどうして私は普通に卒業できないなんて言ったの?
それに、先生すごく気を遣ってくれてるように思うんだけど・・・。」


「ん?努力はいちおうやっておこうと思うんだが・・・君は避妊用の薬なんて飲んでいないだろう?
品行方正、真面目な女子高生はそんなことは普通やらないだろ?」


「うん。やった方がいいの?」


「だめ。男のために女の子が自分の体の負担になるようなことをしてはいけない。
子どもが授かるのは授かっていい時期だからだと俺は思っている。
貧乏で育てるのに困るっていいながら育てるのもそうだろうし、試練をのりこえた家族って俺の理想でもあるんだ。
俺は幸い、経済的には困っていないし、子どもができることはうれしい。
だけど、敦美がつらくて苦しい学生生活を送るのはちょっと申し訳なくてさ。
つわりとかお腹が重いとかね。」


「そんなの大丈夫よ。きっと友達だってよろこんでくれると思うもの。
で・・・どうしてお腹が重いとか言うの?」


「それはその・・・俺はいいとなったらたぶん、ところかまわずというか・・・毎日というか・・・ゴム使用なんて意味がないんじゃないかというか・・・敦美をずっと抱いていたいからすぐに子どもができちゃうだろうなぁって予想するんだけど。」


「はぁ?・・・うーん・・・やだ、知らない!!」