敦美は合田の強引さが享祐と似てると思った。
けれど、部活でいきなりナンパなんて困るし、後輩たちに申し開きできないようなことはしたくないので、きっぱり断った。


「私、付き合ってる彼がいますから・・・そういうお誘いは受けません。
そういうことですので・・・すみませんが失礼します。」


「待てよ!苗木を病気にされて、知らん顔はないだろう?
じゃ、言葉をかえるよ。
うちの花を見にきてくれないかな?
花が好きなんだろう?」


「はい、ほんとにそちらのお店に見に行くだけなら。」


「じゃ、迎えに来る。
君ならじっくり見てもらえるようだな。
今は夏野菜がいっぱいだ。うちの畑も案内しよう。」


「うわぁ・・・あっ。」


「くくくっ、君、反応が素直すぎって言われない?
君の彼氏はそういうところが気に入ってるのかな。」


「どうでしょう・・・。わかりません。」


「ふぅ~~~ん。(相手のことがわからないって、学生の恋ってそんなもんかな。
まぁいい。大人の付き合い方も知ってもらうにはいいだろう。)
じゃ。勉学に励んでくれ、あとでな。高瀬敦美。」


「あ・・・。」


敦美は困ったことになったと思った。
お花や野菜を見せてくれるだけなら、何も問題ないとは思うけれど・・・もし、それだけじゃなかったら。

きちんと、他の部員といっしょに行く予定を決めるって返事すればよかった。
後悔しても、いまさら断るなんて、何ていえばいいのか。


放課後まで、どうしようか悩んで授業などとても頭に入るわけがなかった。



そして、とうとう放課後・・・敦美は覚悟を決めて正門までとぼとぼと歩き始めた。


すると、校舎内だというのに、知った声に驚かされた。


「どうした?顔色が悪いな。
体の調子でも悪いのか。」


「ぇ?えええ!ウソ。どうして先生が・・・」


「ちょっと美術部に画材を配達にきてね。」


「どうして?配達なら、専門の人がいつも・・・。」


「それは口実だな。
敦美のピンチに現れないのは、婚約者失格だろ。」


「ピンチって・・・?」


「門のところまで行けないんじゃないのかな。
まぁ、あいつが来てるなら、敦美なんて簡単に好きにされてしまうだろうからな。」


「あいつって?どうして・・・先生がこれから会う人まで知ってる口調で・・・ま、まさか。
盗聴してたの?」


「人聞き悪いなぁ。
俺としては、同級生ならまだしも、大人を振りかざして向かってこられちゃ、我慢できないんでな。
それも、あのスケベ花屋に婚約者を連れて行かれてなるものかって!」


「あの。先生・・・合田さんって知っているの?」


「ああ、兄貴も弟も知ってるさ。
プレイボーイな兄弟で有名だけど、兄貴の方は結婚して経営もしっかりやっている。
だが・・・弟は油断も隙もない。
さぁ、帰ろうか。
俺といっしょに花でも見学に行こうぜ!」


「あははっ。いいね、それ。」