敦美が直弥の方に顔を近づけると、直弥は敦美の耳にささやくフリをして耳には唇を軽くあてただけで、すぐに敦美の唇に強く自分の唇を押し当てた。


「うっ・・・」


敦美は体が硬直してしまって動かなかった。

(な、何が起こってるの?直兄様が私を抱きしめてる!)


唇を離したとき、直弥が言った。


「初めて会ったときからおまえを意識してたんだ・・・だけど、年だって離れてるし、冬弥がすぐにおまえと仲良くなってたから俺は、何もかも気に入らなくて、おまえにつらくあたってた。

だけど、あの嵐のとき以来、俺の思ってたとおりの女の子だってますます俺はおまえと居たくなってさ。
家にいるのが楽しくなったのもおまえのおかげだった。

なのに・・・お義母さんにみんな読まれてしまってさ・・・おまえがほしければやることをやれってことみたいだから・・・苦労かけるけど・・・。」


「お母さんが何?どういうこと?」


「ごめん、知らなかったんだな。
お義母さんは俺たちとおまえとは離れた方がいいと決断したっていうか・・・とくに俺のことで、俺がおまえを妹だと思ってないことを意識して、わざと離したんだ。

今は仕方ないと思ってるさ。
けど、絶対、俺はおまえも家族もみんな守れるようになって帰ってくるから、おまえもやるべきことをまずがんばるんだ。」


「直兄様は・・・私のことを・・・妹だとは思ってくれなかったの?」


「うん。し、仕方ないだろ。
敦美はかわいいし、がんばりやだし、ほんとは離れるのだって・・・特定のボーイフレンドができたらどうしようとか、大学にいったりしたら、変な男に捕まりはしないかとか、心配で心配で。

そう思ったら、今日は絶対に告白しなきゃと思ったんだ。
あぁ・・・敦美は無理に俺のことを考えなくていいからな。
俺だって高校生のときは、見た目しか気にしたことなかったし、真剣に恋愛なんてしたことなかったから何にもいえなくてな。

明日な、もうアメリカへ行くんだ。
まずは視察行動っていうか・・・見学して、それから引っ越し準備して、正式にあっちでな。
まぁ、なんていうか・・・俺も絶対って約束なんてできないんだけどさ、おまえは俺にとって妹っていうよりは特別な女の子なんだ。
困ったことがあったら、連絡してこいよ。」


「う、うん。私はずっと嫌われてるって思ってたから、まさか直兄様にこんなに好かれてるなんて知らなかった。
すごく・・・うれしい。
私もいっぱいがんばるね。
ありがとう・・・直弥さん。」


「ごめんな、こんなことしか言えなくて。
兄様付きじゃない呼び方っていいな。
じゃ、帰ろう。あんまり遅いと、お義母さんから殴られてしまいそうだからな。」