あっという間に年が明けて3年に先駆けての進路相談があった。

敦美は冬弥に付き添ってもらって学校の個人懇談にのぞんだ。


「中溝先生、私の行先が決まっているとはどういうことなんですか?」


「じつは、かなり前から七橋先生が高瀬のために考えてくれてたようなんだ。
君は、園芸部に入った動機どおり、たくさんの花や作物に埋もれるような仕事をしたいと言ってたのだろう?」


「はい。お花畑を見られるようなところなら最高!って。」


「それでなんだが、北海道の花を出荷している農家が主体で花好きな人を集めて、将来的にそういった仕事ができるように教えこんでくれる学校を設立したんだよ。

専門学校になるが、2年制でな。
実際の仕事をしながら、花や野菜のことを学んでいくんだ。
そして、将来的には仕事できる農家さんへと紹介してもらえるようになっている。」


「わぁ!すごいですね。
そんなところを七橋先生が見つけておいてくれたんですね。」


「そうだ。どうかな?
君さえよかったら、3年の体験学習で北海道まで行ってもらう。
悪いが、交通費や宿泊費は自費になるけどな。」


「行きます。私、がんばります。」


「そうか。君の意欲をあいつが知ったら、きっと喜んでるな。」


「そうですね。そばにいなくても、こんなにお世話になるなんて。
やっぱり七橋享祐はすごいなって最近、思うんです。
私にはもったいなさすぎる人だったんだって・・・。」


「それは違うと思うぞ。
あ、俺は学校でどうの言える立場じゃないけどな。
あいつはこの学校はもちろん、クラスのひとりひとりの希望にそった進路について真面目にリストを作っていた。
真面目な仕事ぶりだ。
それがあたりまえなんだよ。俺たち、教師としてはな。

だからもったいなくなんてない。
とくに高瀬のことを話すあいつは、とてもうれしそうだったんだから。」



冬弥との帰り道・・・。


「なんか情報入ったか?」


「都築さんからきいた話では、やっぱりあの奥様と享祐さんは再婚する予定みたいなの。」


「そっか・・・。俺のとこに入ってきた情報だと、田神の息子たちと享祐はうまくいってないらしいときいた。
なのに、再婚なんてできるのかね。」


「お互いが結婚しようと思えばいいんじゃないかしら。
息子さんたちも、新しいお父さんが気に入らなくても本当のお父さんから遺産がどっさり入るのなら、大人になったときに感謝するときがくると思うわ。」


「もう、吹っ切ったのかい?」


「ううん。でも吹っ切らないとって思うわ。
進路もちゃんと考えておいてくれたんだし。

だけど、忘れられない私が言うの。
まだ、納得できないでいるでしょうって。
私はまだ若いよね。
焦るような年じゃないわ。そうよね。」
今すぐ、決定しなきゃいけない年じゃないはずだよね。」


「ああ、敦美ちゃんはまだ高校生だ。
じっくり、よく考えていいんだよ。」


「うん。だけど、冬弥兄様・・・お金のかかることを任せてしまってごめんなさい。
もう少しだけ・・・力になって。」


「俺に気兼ねするなって。それに・・・じつは、金銭面では直弥兄さんがちょっと手助けしてくれてるんだ。」


「えぇえええ!いつの間に・・・。」


「兄さんな、正式に結婚して、子どもの父親になったんだってさ。
それで舅さんも好意的になったっていうか、いいおじいちゃんになっちまったらしい。

今はいろいろ教えてもらいながらがんばってるそうだ。
敦美にも謝っておいてほしいと言われた。

兄として、費用は半分出してくれてる。
よかっただろ?」


「うん。よかった・・・。」