敦美は画家になった享祐のすごさを知ったけれど、その反面日常の享祐は悲しい日々を送っていたのだと胸が痛くなった。
しかし、そこで疑問が・・・。

「どうして、私のこと、こうして付き合ってくれるんですか?」


「とってもかわいいから。」


「嘘です!しかも、私に享祐と呼べって・・・私みたいな生徒にそんなこと。
何か理由があるはずです。」


「ないさ。担任になって君と目が合って、とても引きつけられた。
引きつけられたと思ったときから、君が頭から離れなくなった。
紙と鉛筆を持つと、つい君の絵をね・・・。

暗かった俺の心に突然、光が届いたっていうのかな。
君が高瀬冬弥の妹だってことも、きっかけだったし、兄の直弥の愛人になるって話も衝撃的だった。
今、俺は高校の先生として満足してるって思ってたのに、いきなりじゃまをする存在が現れたと思ったよ。

言ったでしょ、俺は夢中になるとね・・・。」


「じゃ、私に飽きちゃったら?
私は捨てられちゃうの?」


「ぷっ、あはははは。
ほんとに面白いことを考えるねぇ。
俺は、夢中になるものはそんなにないって。
飽きてしまうようなものは、夢中にもならないよ。」


「じゃ、私次第なの?」


「そうだね。けど、無理強いはしたくない。
敦美は俺の生徒でもあるからね・・・どうして成長途中の女の子を好きになってしまったんだろうって思うけど、好きになってしまったのだから、押すまでだ。

とはいっても、敦美が他の男性を選んで俺を捨てたら・・・俺はもう女性とは真剣には付き合う気はないけどね。
これで気がすんだかい?」


「ええ・・・はい。」


「不安そうだね・・・だけど、うれしいな。
君が、俺に興味を持ってくれてる証拠だもんな。

こんなことを話したのは君が初めてだな・・・きっと。
そもそも話すことだって悲しかったから。」


「ごめんなさい、悲しいお話をさせてしまって。
私、帰って勉強します。
わがまま言ってすみません。」


「いいよ、学生なんだから。
不安材料があったら遠慮なく言ってくれ。
俺はけっこう忍耐強いから、でも・・・せっかく来てくれたんだったら。」


享祐はにっこり笑って敦美の唇にキスをした。

前回に続いて、深くはないものの、時間にするとけっこう長い。


「あ・・・もう、いきなり!」


「真っ赤だ。カワイイな。
よし、もう1回だ。あれ?」


「いやぁ・・・これ以上したら、勉強できなくなっちゃう!!」


「ふふっ、しょうがないなあ。
じゃ、おやつでも作ってやるよ。
ホットケーキでいいか?」


「そんなお子ちゃま扱い?」


「いらないのか?」


「いえ、いただきます。」


「安心するとお腹が減るだろう。あはははは。ほんとに敦美はかわいいなぁ。」


結局、敦美は不安だった疑問が解決したことと、享祐がホットケーキを焼いてくれたことに満足して試験勉強に打ち込むことができた。