翌朝、冬弥の部屋で声がする・・・。


嵐のことで敦美のことが心配で眠れなかった母の万須美が早朝から家にもどってきたのだ。


冬弥は前日は部屋から出ることもなく、ブランデーを少し仕事前に飲んだこともあってずっと眠っていたことを万須美に話したのだった。


そして、万須美と冬弥が敦美が部屋にいないことを知って、直弥の部屋を開けると万須美が真っ赤な顔になって叫んでいた。


「な、何をやってるの!!あなたたち!!!」


直弥のベッドの上で直弥に抱きすくめられるような形でよく眠っている敦美がいた。


先に直弥が万須美に気づいて、飛び起きた。


「お、お義母さん・・・俺は何もしていない・・・。誓って何も!」


半分寝ぼけながら敦美が起きると・・・


「あれ?お母さん・・・どうしてここにいるの?冬弥さんまで?」


「ちょ、ちょっと来なさい!」


敦美は万須美に耳を引っ張られるようにして敦美の部屋へと連れていかれた。

そして、何があったか敦美に説明させた。



「お兄様は怖がる私を守ってくれただけ。やましいことなんて何もしてないわ。
私とても怖くて・・・息もまともにできなくなって・・・もう死んでしまうかと思った。
でも・・・そんなときに直弥お兄様が助けてくれたの。

お母さんだって知ってるでしょ。
私が嵐がダメなことくらい・・・。
外が少し明るくなるまで、発電機でそこのランプをつけて直弥お兄様が私をずっと見ていてくれてやっと眠れたの。
お兄様がいなかったら・・・私は・・・感謝でいっぱいだわ。

お願い、お兄様を咎めないで!
全部、私のせいなんだから!!」



万須美はこの場では2人の言い分をきいて2人とも同じ説明をしたので、引き下がる形で終わったが・・・
何かしら考え込んでしまった。



直弥の部屋では、冬弥がニヤニヤしながら、直弥に話しかけていた。

「あんなに彼女には冷たいはずの兄さんが・・・一晩ですっごい親密度じゃないか。」


「うるさい!俺はほんとに何もやましいことはしていない。
妹が今にも死にそうだったから助けただけだ。
おまえが部屋から出てきて手伝わないし、俺しかいない状況できつい態度はとれなかったんだ。

万須美さんは親父と結婚するためにやってきた・・・けど、あいつは来たくてここに来たわけじゃないんだ。
嵐はじつの親父さんを思い出してしまうカギを開けてしまった。

そう説明されたら、突き放せるわけないだろ!」


「そうだね。兄さんはほんとは俺よりずっと優しい人さ。」


「冬弥・・・それだけか?」


「ああ、俺はわかってるよ。兄さんは自分の仕事に一生懸命な上に父さんのフォローもやって家庭に気を遣い、意地悪な役をかって、何気ない顔をしているってね。
俺だって何も考えてないわけじゃないさ。

自由に絵を描かせてくれて感謝してるよ。
だから、敦美にだって感謝される兄さんなのは当たり前だろ?
けど・・・ちょっとびっくりしたな。
あんなに愛おしく女の子を抱きしめて眠る兄の姿にね。あはははは。」



「おい、おまえ!!!しょうがないだろ、俺だって疲れてたんだからな。」