敦美は七橋のアトリエのある家へと移動し、冬弥は直弥に会いにいった。


「掃除が行き届いていないけど、今夜だけ我慢してくれ。
寝室だけは掃除してあるから、寝るには問題ないはずだ。」


「あの・・・寮のそばのお家でも広いと思ったのに、こっちはすごいんですね。」


「冬弥みたいな客が泊まっていったりするからね。
それに、打ち合わせや商談をしたりもしてるし・・・ここは仕事場に寝床がくっついてるようなところだ。」


「私、明日・・・学校にはいけないですね。」


「どうだろうな。冬弥からの連絡を待つしかないけど。」


「そうですね。すみませんでした。
先生は明日は学校ですね。
私、もう平気ですから・・・お家の方へもどってください。」


「俺もここにいるよ。
俺の寝床はちゃんとあるしな。

それに知らない家で女子高生ひとりなんて住まわせられないだろ。」


「でも、ここから学校まではちょっとあるし。」


「いいから俺の言うことをきけって。
風呂に入ってすぐに休んだ方がいい。
何なら背中を流してやろうか?」


「えっ!そんなの遠慮しますっ!
お風呂行かせていただきます。」


「うはははは。ほんとにかわいいな高瀬は。
いっしょにいると、楽しくなる。
あ、そうだ・・・ここにいる間に、描かせてもらおうか。」


享祐は久しぶりにアトリエに入ると、スケッチブック片手に何やら真剣に描き始めた。

数枚のデッサンをしたところで、敦美の声がして振り返ると、享祐は持っていた鉛筆を落としてしまった。

敦美がバスタオルを体に巻いた状態で困っていたからだ。


「せ、先生・・・着替えがないんです。
わ、私・・・。」


「あっ、すまない。すぐに俺のTシャツとジャージーを持ってくるから、ちょっとだけ待ってくれ!」


享祐に用意されたTシャツとジャージーに着替えた敦美は、享祐を思いのほか動揺させていた。


(Tシャツの下にあるのは何もつけていない素肌・・・本人はTシャツを着ることで安心しているのかもしれないが、俺からすればまだ何も着ていない方がマシなくらいだ。

Tシャツに体の丸いラインがくっきりと出ているし、襟足がまだ少し濡れていて髪をあげているのがなまめかしいくらいに。)


「先生!ちょっと、先生・・・」


「えっ・・ぬぁぁっ!!な、なんだ高瀬!」


「あのう・・・すご~くイヤラシイ目で私を見ていませんか?」


「そ、そうか?俺は何もおまえをみてたわけじゃないぞ。
丸みがきれいだとかそういうのは・・・や、やべっ!」


「何の丸みですか?せ、先生まさか・・・やだ・・・信じられない。
私もう、部屋で休ませてもらいますね。
おやすみなさい。」


「あ、ああ・・・俺は・・・べつにその・・・ラインをきれいだと思っただけで・・・だな。
うう・・くそっ!」