翌朝、敦美が登校すると、クラス内が大騒ぎになっていた。



「ねえ、どうしたの?」


「なんかね、さっき教頭先生がきて、担任の七橋先生が交通事故に巻き込まれて右腕をけがしたらしいのよ。
入院とかはしなくていいらしいんだけど、今日は休みだから、副担任の中山先生がホームルームするんだって。」


「えっ、そうだったんだぁ・・・。
じゃあ、ケガってどのくらいの状況なのかなぁ。」


「それはあんたのクラブの人達の方が詳しいんじゃないの?」


「あっ・・・美術部にも連絡いってるよね。
放課後先輩にきいてみるわ。」



放課後、美術室に行くと、副部長の沢井が今日の課題だという果物や人物像の首をセッティングしていた。


「やぁ、高瀬のクラスも大騒ぎだったんじゃないか?
七橋先生が担任だもんなぁ。」


「ええ。ところで、どうして沢井先輩がそんな準備をしてるんですか?」


「ああ、これ七橋先生からの伝言なんだ。
職員室にメッセージを残してくれててね。
部長は部長会議に行ってるから、僕が今日の課題の準備をしてる。」


「じゃあ、私も手伝います!」


「あっ、高瀬にも先生から伝言があるんだ。
そっちの用事すませにいってくれない?
え~と、ここに行って、夏の展覧会の申し込みをしてきてほしいそうなんだ。」


「これって・・・。」


「数学の中溝先生って知ってるかな。」


「見たらわかるかもしれませんが・・・あまりその・・・知らなくて。」


「そう、その中溝先生の実家が画廊やっていてね。
そこでうちの部が展示品を置かせてもらうんだよ。

文化祭のときは学校に作品を並べるんだけど、その予行演習っていうのかな。
いい作品を展示してるとね、中溝パパが値段をつけて売ることもあるそうだよ。」



「へぇ、本格的ですね。」


「まぁ、僕たちは高校生だから、そんな高値なんてないし、せいぜい部の合宿費用の一部くらいをくれるんだけどさ、それでもありがたいだろ?
その申込をやらないといけないんだけど、部長も僕も今日は動けそうにないし、今日は金曜だからね・・・行って来てほしいって七橋先生から伝言があったんだ。」


「そうですか。私にできることだったら、何でもやりますよ!」


「それは頼もしいな。じゃ、すぐ行って来て。
申し込みが済んだらそのまま帰ってくれてかまわないから。
申込者や出品するものはこのリスト通りだから。
書きうつしてくれればいいだけだよ。
もしかしたら先生がいるかもしれないけど、いたら様子とかきいといて。」


「わかりました。
じゃ、次は月曜日に・・・。
行ってきます!」


「おつかれ!」