「ちょっと、待ちなさいよ」


走って追いかけてきた様子だ、息切れをしている。
つかまれている腕に目をやる、気に入らないと私の脳が言っているようなので振り払う。


『なんですか』


「……」

『まさか何にもないのに追いかけてきたんじゃないでしょうね?』


何も言えない、そう顔に書いてある。
私から目をそらし下を向く彼女、見た目とは違い案外DQNではなさそうである。


「ここじゃ言いにくい……ちょっと来て」

『あそこにあるカフェなんかどうですか』


私が指を指す場所は人気のなさそうな地味なカフェ。
あれなら人目を気にしなくてもよさそう


「わかったわ」



『それで、用事はなんですか』

「貴方どうせDQNとか思ったんでしょ」

『白髪で赤目のカラコンしてる痛いやつとしか見てないですから』


真顔で私が言うと顔を少し赤く染める、どうやら痛いところをつかれたようだ。


「私はDQNじゃないし、カラコンとしてない、髪も染めてない」

『じゃあ外国人の方ですか、それにしては顔平いですね』

「何よ! 私はアルビノよ!」

『あぁ、確か岡田さんが言ってた気が』


どうやらこの方は世にも珍しい、先天症のアルビノのようだ。
白い髪に白い肌、神秘的な赤い瞳がとても綺麗。
それでだからなんだというのだ


『だからなんです?』

「貴方知らないの……最近アルビノを狙う不審者がこの辺りで出たのよ
この頃妙に視線を感じて」

『はぁ、なら私ではなく警察に電話をしてください。
私はただの巡査なので、では』


机にお金だけおくと、さっさと背を向けて歩く。
わざわざこんなしょーもないことに話すのは時間の無駄、せめてもっとマシな話をしてほしい。


「お願い……助けて」

『しがみつかないでください』

「お願い!」


周りの視線がこんなにも痛いことはない、せっかく地味なカフェに来たのに台無しである。
これでは噂の変な奴に成り果ててしまう


『私が電話したらいいですか』

「助けてくれ……る?」

『違います、私自体は動きません
私の上司に言うだけですから』


さっきまで生意気だった彼女は女の子っぽくなっている。
本当に怖いのだろうか? そんなもの体術とかで倒してしまえばいいのに

スマホを起動させ、電話から岡田さんにかける


《プルル、プルルルル》

『もしもし岡田さん』

《電話中です》


珍しい、私の電話をでないことはどんな理由であれなかったのに。
仕方あるまいと今度は警部のライトにかける。
かれはアメリカと日本のハーフらしい


《プルル、プルルル》

「なんだ」

『あ、それがアルビノ誘拐事件が1ヶ月前にありましたよね?
それで心配性のアルビノの人が視線がするから助けてくれって言うんですよ』


貴方知ってたんじゃない! という目線で私を見つめる彼女。
まぁ、どうせこんな事だけで警察は動かないだろうし大丈夫だろう


「あぁ、すまないが
その人には断ってくれ、証拠や被害がないと動けないってな」

『ですよね、ありがとうございます』


私の言葉で察したのか、彼女は悲しそうな顔をして下を向いた。
同情などする時間もないし今度こそほって帰るか


『力になれなくてすみませんね』

「……私が襲われたら動いてくれるのよね」

『はい?』

「もういいわ」


襲われたら? 彼女はまさか……自分から罠にはまるつもりか
まるでト◯とジ◯リーのようだ


『そうですか、ならお元気で』


これから起こることは全て繋がっていく