早川彩澄の華麗なる日々


そんな一瞬の出来事を前に、早川は自分が何をしようとしていたのかを忘れる。これがアルバイト中に起きたことなら冷静に対処し――そもそもこのような事態にはさせないのだが。


何が起きても冷静に対処するため、気を張り続ける仕事中とは違い、プライベートは気兼ねなくゆったりと過ごすため、ある意味油断しきっている状態だ。だから、今の状況に追い付けない。


撃沈した男を見下ろしてから、少年が女の方を見る。頼りになるはずの男が倒れたため、女は逃げるようにその場から立ち去った。


「本当に、すみませんでしたッ」


再度、土下座せんとばかりに謝り始めた少年に、早川は気にしないでと答えながら今度こそ立ち上がる。


服の埃を落としてからから少年に向き直ると、傍らに立つもう一人の存在があることに気付いた。高校生か大学生かと思われる男だが、彼も少年側らしい。早川に対して口を開く。