早川彩澄の華麗なる日々


「お客様、代金の精算も忘れずにお願い致します。さもなくば食い逃げとして警察に連絡を差し上げなければならなくなりますので、どうぞよろしくお願い致します」


ピタリと歩みを止め、母親達は変わらぬ笑顔を見せる早川を振り向き見る。そんな母親達の元に歩み寄り、小声で進言する。


「一つ忠告を申し上げます。お客様が大声で話をしていた内容を整理しますと、身元がすぐに割れてしまいます。ご注意下さい。例えば――」


そして今度は、子供を抱き抱えている母親にのみ聞こえるように耳元で囁いた。その途端に母親は、「な、何で……」と見るからに目が泳ぎ、狼狽えた様子を見せ、青ざめた顔をしてバッグから財布を取り出しレジに向かう。


「それでは失礼致します」


早川は、今回の一番の被害者である客が席に座っているのを見て、自分の仕事に戻っていった。


《脅しではなく忠告です》