母親を自分のペースに巻き込んだことを実感し、ここで早川は営業スマイルを見せる。
「ですからここは飲食店ですので、お客様が母親としての義務を放棄する場所ではありません。
また、事の原因は走り回っていたお子様がこちらのお客様にぶつかってしまったというものです。自業自得であると申し上げます。
そして、当店は公園でも体育館でもありませんのでお子様が走り回る場所ではありません。そのような一般常識をご存知ないお客様がいらっしゃったことに驚きますが、これを機にご理解頂けたら幸いです」
早川が言う痛烈な皮肉を前に、一瞬呆気に取られた母親だがみるみるうちに顔を紅潮させる。その母親の後ろには同じ席に座っていた母親達が並んでおり、非難がましい目を早川に向ける。
母親達の視線が早川に向いている間に、店員が女性を席に連れて行った。彼女も服が汚れてしまったが、その対処は任せてもいいだろう。



