「ケーキいかがですかぁ」

 あたしは道行くカップルに声をかける。

 あたしはなんだってクリスマスにバイトなんかしてるんだろ。

 それもこれも、佑樹(ゆうき)とケンカしたからだ。

 ケンカ……かな。このまま自然消滅とかしちゃったらどうしよう……。

 あたしが視線を落としたとき、視界に男物の革靴が入った。顔を上げると、あたしたちの前に四十歳くらいの男の人が立っている。

「雪だるまのケーキ、ひとつ」
「ありがとうございまーす」

 サンタクロースが言ってケーキの箱を差し出し、お金を受け取った。

「ありがとうございます」

 あたしもぺこりと頭を下げた。

 続いてやってきたのは三十代前半くらいのカップル。あ、カップルかと思ったけど、おそろいの指輪をしているから夫婦かな。

「雪だるまの、かわいいね」

 奧さんの声にだんなさんが足を止めた。

「これにしようか」