しばらくしてから、二階へ行ったお母さんが困ったようにリビングに下りてきた。
「ねぇ、あの子知らない?」
「あの子?」
あの子ってどの子のこと言ってるんだろう、と思って首をかしげて聞き返す。
「あんたの弟の」
「知らないよ?」
お母さんの示すあの子がわかった瞬間、ああ、と思って答える。
私には、まだ生後五か月の弟がいるけど、どうやらその弟の姿が見当たらないらしい。
「おかしいわね…。あんたの部屋にいたはずなのに…」
「へ?」
お母さんの独り言に思わずまねけな声を出す。
だって、私の部屋には人形とぬいぐるみだけで、弟の姿なんて見当たらなかったは
ず。
ハッとした私の顔は途端に青ざめる。もしかして……。