「今年のハロウィーンパーティーは、魔女のカッコで行こう」

うんうん、と頷きくるりと反転して僕のもとから走り去る。
後ろ姿の足取りは軽やかだ。
その姿、言動は、複雑で繊細な彼女の心の中とは真逆のようだ。

あのとき溢した『もぅ、嫌だ……』という言葉ひとつ。
ただそれだけが、僕に曝した本心だったのだと思う。



彼女は、僕の好きだった、人。