正門を出て、母親と歩いていると、前でごそごそと鞄を探っている新入生であろう女の子がいた。
傘を肩で支えているのか、大きく傾いた傘からはポタリと滴が落ちている。
すれ違い際にそっと覗くと鞄から何かを見つけた女の子は、手に式次第を持ち、その顔をほころばせた。
その笑顔は、降り続ける雨に冷やされたものさえも温めてくれるようだった。



歩道のすぐ横はグラウンドで、雨に濡れた誰もいないグラウンドには、遠くから微かに「ファイトー!」と、声が聞こえた気がした。
遠くには、さっきの桜が姿を変えずに立っているのが見えた。