とめどなく流れ行く時間に身を任せ、時にほろ苦い心に負けそうになりながら、初夏の風はいつしか過ぎ去り、紅葉を終えた木々達が寒さに震えるように風に揺らされている、ある日の放課後。
進路指導で担任に呼び出されていた私が、職員室から教室に戻ると、その日の日直だった小泉くんが一人日誌を書いていた。

「……小泉くん、まだ書き終わってなかったの?」

ガラリ扉を開けて、声をかけると、小泉くんがこちらを見る。

「…ん。さっき起きた」

そう言えば、HRの時に机に突っ伏していたことを思い出す。

「部活、良いの?」

クスッと笑いが漏れそうになるのをこらえて尋ねると「たまには休んでもいいだろう」と、少し笑って彼が答えた。