本当は、相変わらず高みから見下ろす桜よりも、野に咲くタンポポの方が好きなんだけれど。
その言葉に偽りはない。

「パパ、抱っこして!」

小さな愛しい娘にせがまれる。

「おいで、桜」

僕がしゃがんで両手を広げると、ママの手を優しく解き、僕に飛び付いて来る。
僕はにっこりと笑顔で抱き抱えて立ち上がる。
「よいしょ」と片手に抱き直して、立ち上がった君の手を取った。
ママになった君の手を。



遠く桜が風に舞い、ひとひらの花びらがそこにフワリと着地した。



*春に咲く花/完