腕を掴まれて、お腹に手が回ってる。
階段を落ちる寸前で、支えられたんだ。
「望愛っ、話を聞いてっ。」
「いやっ。いやだよっ。」
「愛希くんなんて、大っ嫌い!」
ボロボロ涙がこぼれた。
抱きしめてくれている腕の力が少し緩んだのがわかった。
だけど、
「お願いだから、泣くくらいならそんなこと言うなよ、」
愛希くんの震える声に、
ハッとした。
なんてことを言っちゃったんだろう。
気付いたら
手を振り払ってお腹に回る手も振りほどいていた。
「こんなことならっ
ここから落ちたほうがマシだよっ。
お願いだから、今は一人にしてっ。」
ごめんね。
私は階段を駆け下りた。
だけどね、もう本当にいやなの
あの子に触れた手で、私に触れないで、
「望愛!」
あの子を呼んだ声で、
私の名を呼ばないで。


