記憶を消してまで、何度も何度も同じ苦しみを味あわせる理由は?


その疑問をくみ取ったように、車掌が歩き出した。


途中で振り向き、「付いて来い」と言う。


俺はヨロヨロと歩き出した。


呼吸は正常だ。


痛みも苦しみもない。


心の痛みだって、車掌に手をかざされた事で消えていった。


俺は人助けをして死んだから、こういう痛みを免除してくれているのだろう。


車掌に付いて行くと、次のドアがあった。


「この電車2両じゃなかったのか?」


そう聞くと、「録画されている数だけある」と、答えられた。


「それってどういう……」


言いかけた言葉を俺は飲みこんだ。


開かれたドアに、俺たちがいた。


電光掲示板の文字は《残り32》


そしてその奥にあるドアも、開いていた。


ドアの向こうにも、俺たちが見える。


電光掲示板の文字は《残り33》


そして、更にその奥も……。