俺は視線を車掌へと戻した。


「俺は、ここから出たい」


会話ができるかどうかわからなかったが、なにもしないよりはいい。


俺はダメ元で話しかけてみた。


すると、車掌が深くかぶっていた帽子を浅くかぶりなおしたのだ。


今まで見えていなかった目元が見える。


その目は真っ白で、黒目がない。


ギョロリと大きく見開かれた白目で見つめられて、俺は「うっ……」と、小さく声を漏らした。


「出る事はできない」


白目をこちらへ向け、響く声でそう答えた。


会話ができる事がわかると、少し安心する。


しかし、この目と声で不気味さは加速するばかりだ。


俺は唾を飲み込んだ。


「俺はこの中で、何をすればいい?」


「償いだ」


「償い……?」


俺は眉をよせて聞き返す。


確か朋樹もそんな事を言っていた。


「『残り30はお前たちの償い』」


「その通り」


車掌は深く頷く。