「穂香、俺たちはここから出よう。な?」


旺太がそう言い、あたしの手を握りしめる。


その手のぬくもりに、一瞬心臓がドクンッと跳ねた。


それは恋のトキメキなんかじゃない。


本能的に感じるなにかが、そこにはあった。


「旺太は……何も思い出さないの?」


「俺? 俺は、まだ何も……」


そう言い、うつむく旺太。


「穂香は、何か思い出したのか?」


その言葉にあたしは頷く。


そして、旺太が書いた文字の《1人はイジメ》を、指さした。


「これ、きっとあたしの事だと思う」


「イジメ……」


「そう。あたし、学校でイジメられていたの」


そう言うと、旺太は辛そうに表情を歪めあたしの手をギュっと握りしめた。


「澪は事故。優志は病気。朋樹は喧嘩。愛奈は虐待。あたしはイジメ……旺太は助け……」