「……凛音、悪いのは俺だよ。俺はお前と優が一番大切だ。大切なモノを護る為なら何でもする。
……けど、今回はやり過ぎたんだ」
「……っ、そんなことない!そんなことないよ!貴兄はあたしの為に色々してくれた。
あたしの方が、あたしの方が貴兄を苦しめたんだよ。沢山哀しませた……」
そうだよ。哀しませたのはあたしの方だ。
──“あの時”。
あたしが中田の前へ現れた“あの時”、貴兄はあたしを見て哀しそうに表情を歪ませていた。
今ならあの表情の意味が解る。
あれは単にあたしがショックを受けているのを見て哀しんでいたのではなくて、“自分”がその状況を作ったからだ。
あたしが哀しむのを知っていておびき寄せたから。
だからあの時、貴兄はツラそうな表情で顔を背けていた。
きっと、貴兄は泣き叫ぶあたしを見て罪悪感に苛まれていたんだと思う。
あたしが貴兄の名前を呼ぶ度、貴兄は自分を責めていた。
貴兄は優しいから。
きっと何度も何度も自分を責めていたんだ。
そして、同時に哀しんだ。
あたしを哀しませた事に対して哀しんだんだ。
「凛音」
穏やかな声と共にそっと身体が離される。
見上げると、視界に映るのはいつもの優しい瞳。
獅貴王と呼ばれる人などどこにもいない。
目の前にいるのはあたしの大好きなお兄ちゃん。
頭が良くてカッコいい。
けど、超がつく程シスコンでブラコンなお兄ちゃん。
「無理矢理連れ戻してごめんな」
「……え?」
突然落ちてきた言葉に眉を潜める。


