「獅貴王」
「お前から何も聞くつもりはない」
まるで十夜が話始めるのを待っていたかのように十夜の言葉を遮る貴兄。
瞬時に“あぁ、やっぱり”と思った。
貴兄は──
「俺は凛音の口から聞きたい」
「………え?」
思いもよらぬ言葉に勢いよく振り返る。
すると、視線の先には貴兄の穏やかな笑顔があった。
「貴兄?」
哀しげに揺れるその瞳にあたしは何を言えばいいのか分からなかった。
ただ、貴兄の名前を呼ぶ事しか出来ない。
「……ごめんな。俺はお前を騙して哀しませた」
そう言った貴兄はあたしに向かってそっと右手を伸ばす。
左頬に触れる貴兄の指先。
「哀しませると分かっていたのに……」
貴兄……。
何かを耐えるように伏せられた瞳。
頬に触れる貴兄の手は微かに震えていて。
「……っ、貴兄!」
堪らなく胸が締め付けられた。
「……貴兄、貴兄は悪くないよ。貴兄は悪くない!悪いのは……」
貴兄にその選択をさせてしまった“あたし”だ。
あたしが悪い。
貴兄を巻き込んだあたしが悪い。
貴兄はあたしを護ろうとしてくれた。
あたしの為に中田を潰そうとしてくれた。
寝る間も惜しんで動いてくれた。
そんな貴兄を責める資格なんて、あたしにはない。


