最後の言葉はきっと目の前にいる中田でも聞き取りにくかっただろう。
大きい声でなんて言えなかった。
だって、この言葉は貴兄に聞かれたらいけない言葉かもしれないと思ったから。
貴兄が今、どう思ってるのか分からない。
だから、安易に口にしたら駄目だと思った。
だけど、中田には本心を伝えなきゃいけない。
小声でもいいから伝えなきゃといけないと思ったんだ。
きっと……これで最後だから。
「何回来られてもあたしは行く気はないから。だから──」
「そんなにアイツが良いのか?」
「………っ」
あたしの心情を察してか、言葉を遮った中田の声も周囲に聞こえないぐらい小さかった。
最後の最後にその優しさはズルいよ、中田。
真剣なその眼差しに思わず笑みが零れる。
「……うん。この世で一番」
「これから何があっても?」
「うん。ずっと変わらない」
それは断言出来る。
あたしはこの先十夜しか好きにならない。
ううん、なれない。
あたしの中で十夜より好きになれる人なんてきっといない。
だって、今も、
今も後ろにいるだけで嬉しい。
同じ空間にいるだけでこんなにも満たされる。
こんなに好きになれる人なんて、きっと世界中どこを探してもいない。
「その言葉、忘れるな」
「……中田?」
中田の声色が変わった。
いや、声色だけじゃない。目付きも。


