あたしは“この人”こそ人の上に立つ者だと思った。
あらゆる策を考慮し、その中で最良の策を見付け出す。緻密に作られたその策は当然穴一つ見付からない。
狙った獲物は絶対に逃がすことは無い。
敵を欺き、その首を掻っ切るまで追い続ける。
きっと、敵にすると一番恐ろしい人。
それが獅鷹総長、“獅貴王”。
あたしは今日、初めて獅鷹総長としての貴兄を見た気がした。
そして、S県でトップと言われるのは伊達ではないと、今日、この身を持って知った。
「馬鹿な……この俺が……」
顔を伏せ、拳を小刻みに震わせる中田。
“馬鹿な……この俺が”
この言葉に続くのはきっとこの言葉。
“負けるなんて”
プライドの高い中田の事だから、きっと口には出せなかったのだろう。
あれ程までに勝利に執着していたんだ。
簡単に認められないのは仕方ないのかもしれない。
「……っ」
悔しさを滲ませ俯くその姿は、抗争前のあの自信満々な姿とはかけ離れていた。
同情する。本当に。
中田は絶対に関わってはいけない人に手を出してしまったんだ。
手を出さなければ、もしかしたらもっと違った結末になっていたのかもしれない。


