「これがさっき言った“誤算”の始まりだった」
「……誤算の始まり?」
分からない。今の説明のどこに誤算が生じると言うの?
「疑い出したんだよ。俺の事を」
「……え?」
そう言った貴兄は中田を見据え、スッと目を細める。
「俺が二人を逢わせると言った事で中田が俺に不信感を抱いた。
俺が凛音に抗争の計画を告げ、それを桐谷に伝言させる。
もしかしたら自分を裏切り、裏で鳳皇と手を組むかもしれない。そう思ったんだろう。
だからその日から俺の見張りを強化した。違うか?」
「………」
「それに気付いた俺は極力家に帰らないようにし、凛音から距離を取った」
「……あ」
そうか。だから貴兄は家に帰って来る事が少なくなったんだ。
十夜と逢った“あの日”も貴兄は家にいなかった。
「中田が俺を疑った事によって俺の計画に綻びが出来た」
「綻び?」
「そうだ。Dを此処へおびき寄せるにはこの場にいる中田側の人間と獅鷹の人間を減らさなければいけない。
此方に余裕があればDを出す必要がないからな。
中田側の人間は数が多かった。今、此処にいる中田側の人間の三分の二は外で待機する予定だったんだ。
多分、中田は俺が裏切った時の為に人数を置いておきたかったんだろう。
俺は外の人間を何度も中へ持ってこいと言ったが中田は首を縦に振ることはなかった。
……中田、お前は俺との計画の他に何か策を練っていたんだろう?」
「………っ」
「図星か?」
ギリっと唇を噛み締める中田に貴兄はゆるりと頬を緩める。


