香水で分かったって、それって物凄く恥ずかしくない?
だって、気付かれるぐらい十夜の香水があたしに移ってたって事でしょ?
それって余程近くに寄らなきゃ移らないものじゃ……。
「………」
絶対貴兄あたしと十夜が抱き締め合った事気付いてるよね。
「俺はすぐに中田に報告をし、抗争の準備を始めた。
抗争の日時と場所を鳳皇に告げるよう中田の下っ端に指示し、その裏である策を練った」
「……ある策、だと?」
貴兄の言う策に覚えがないのか、中田は怪訝に顔を歪める。
「あぁ、そうだ。さっき言った“誤算”で急遽練った策だよ」
「……え?でもさっき言ってた誤算って十夜がマンションに来た事でしょ?」
それはあたしがマンションに行った事で解決した筈じゃ……。
「そうだよ。俺は桐谷が凛音を待ってた事に大して重要視していなかった。桐谷が凛音と逢えば問題は解決、あとは仕掛けるだけだ。
けど、中田はそうじゃなかった。中田は凛音を桐谷に逢わせたくなかったんだ。
だから“今すぐ鳳皇に抗争を仕掛ける”と言い出した。こっちが仕掛ければ桐谷は嫌でも帰って来る、そう思ったんだろう。
けど、俺はそれを反対した。桐谷は応じないと思ったからだ。
桐谷は凛音と逢うまでマンションを離れない。俺達の抗争には応じない、そう思った。
だから俺は中田に“桐谷と凛音が逢うまで待つ”と言ったんだ。
……そうだったよな?中田」
「………」
中田は貴兄を見据えたまま何も応えなかった。
貴兄は特に気にする事なくフッと小さく笑みを零し、続ける。


