「中田、この計画は誰が立てた?」
「………」
「お前は俺が立てたこの計画を疑いもしなかった」
「……チッ」
まんまと罠に嵌まった中田はその後悔からか、舌打ちをして貴兄から顔を背ける。
「いや、誤算が一つあったな。とんでもない誤算が」
……誤算?
そう言った貴兄は十夜に目を向け、続けた。
「桐谷、まさかお前がマンションの前で凛音を待つとは思わなかったよ」
「……っ、貴兄知って?」
「……あぁ。鳳皇に抗争を吹っ掛けるタイミングを窺っていたからな。
けど、桐谷は一向に諦める気配がなかった。
凛音が来るまで待ち続ける。俺はそう確信していた。だから凛音に引っ越しの準備をしに行くよう何度も言ったんだ。
凛音と逢いさえすればいつでも抗争を仕掛けられる。桐谷がいないと抗争にならないからな」
そう言えば貴兄、最近目を合わせる度“引っ越しの準備は進んでるのか?”って言ってた。
あれはあたしに準備をさせにいこうと誘導していたの?
あの時は新学期も近いから早く準備を進めなきゃいけないと自分でも思っていた。
それに加え、貴兄にも急かされる。
自覚はなくても頭のどこかで準備をしに行かなければいけないという気になっていたんだ。
と言うことは、あたしは貴兄の誘導にまんまと引っ掛かっていたと言うことになる。
「凛音が桐谷と逢ったのは凛音が帰ってきてすぐに分かった」
「……なんで?」
なんで分かったの?
もしかして、あたしを見張ってたとか?
「香水だ」
「香、水?」
「あぁ。お前から男物の香水の香りがした」
「…あ……」
「それで逢った事が分かったんだ」
「………」
顔の熱が一気に上昇する。
込み上げてくる羞恥に堪らなくなり、隠すように顔を伏せた。


