「宮原らしき人物が獅鷹の溜まり場に来た時、その特徴ですぐに宮原だと気付いた。
けど、俺は中田を潰そうとは思っていても、凛音を鳳皇に渡すつもりはなかった。だから凛音には宮原が来た事を伏せていたんだよ」
「貴兄……」
あたしを見下ろす貴兄の瞳はいつものように優しくて。
でも哀しげに揺れていた。
「……けど、お前は知っていたんだな」
「……うん」
あの時、無理矢理慎に聞いたから。
「宮原が姿を現した事によって下の奴が中田に拉致られ、俺は中田の元へ行かざるを得なくなった。その時、“手を組まないか”と誘われたんだよ。
けど、その誘いはすぐに断った。流石に潰そうと思っている相手と手を組む奴はいないだろう?
……けど、その返事もすぐに撤回する事になった」
撤回……それってあたしが陽の元へ行ったから……?
「凛音、そんな顔すんな。撤回したのはお前のせいじゃない。
保留にしたのは“もしも”の時の為だ」
貴兄の大きな手があたしの後頭部を包み込み、優しく上下する。
表情も声色も仕種も。
その全てが“お前のせいじゃないから”と言っているような気がした。
「凛音が遊大と優音と共にN県へ行った日。桐谷と再会したあの日に俺は中田と組む事を決めた」
「……っ」
「けど、それは鳳皇を潰す為じゃない」
「……え?」
貴兄の言葉に目を見開く。
鳳皇を潰す為ではない?
「どういう事だ。お前は“桐谷がまだ凛音を諦めていない。だから潰す”そう言って俺の元へ来た筈だ」
今まで黙って聞いていた中田が怒りの形相で貴兄にそう問う。


