「──お前がこれからすることは“裏切り”だ」
中田の言葉が迷う心に容赦なく突き刺さる。
まるであたしの心の内を見透かされているような感覚。
中田の言葉はあたしの心を激しく揺さぶった。
鳳皇と喧嘩をして欲しくない。
けど、止めればまた貴兄に哀しい想いをさせてしまう。
いや、貴兄だけじゃない。
優音も……それからあたしの為に抗争をしてくれようとしている皆にもだ。
……どうしたら、
どうしたらいいの……?
あたしはこれからどうしたら──
「凛音。中田の上から退けろ」
「………っ」
……貴、兄?
声がした方へ振り向くと、数メートル先に貴兄の姿があった。
そして、貴兄の隣には部屋に閉じ込めた筈の慎の姿も。
慎、いつの間に……。
誰かに助けて貰ったの?
貴兄と慎、その二人を先頭に、十夜、そして鳳皇と獅鷹の両幹部が揃って此方へと歩いてくる。
三メートル程の所で慎が立ち止まり、続けて十夜、両幹部が立ち止まった。
だが、貴兄は立ち止まらず此方へ歩いてくる。
「凛音、もう終わったんだ」
そう言いながら歩いてくる貴兄。
……“終わった”って?
言葉にならない疑問。
戸惑いが一気に押し寄せてくる。
「決着はついた。終わりだ」
貴兄はそう言うと、あたしの両脇に手を入れ、軽々と持ち上げた。
中田の首から手が離れ、身体が宙に浮く。


