『まぁ、この格好じゃ分かる訳ないよね。お陰でアンタに近付きやすかったけど』
首を絞めてる手に一瞬だけ力を込めて、フッと小馬鹿にしたような笑みを零す。
「……ッ。分、かる訳ねぇだろ。お前それ何処で……」
『これ?更衣室、だよ』
──そう。
あたしの着ている作業着はあの更衣室で見つけたもの。
更衣室から出ようとしたあの時、あたしは段ボールに足を引っ掻けた。
その段ボールの中に入っていたんだ。
袋詰めにされた新品の作業着。
潰れた工場にそれが何故あるのか気になったけど、そこは敢えて考えない事にした。
と言うか、考える暇なんてなかった。
そんな事よりも頭に浮かんだのは“ある作戦”。
そう、それは──
『変装をすれば誰にも気付かれない』
「………ッ」
『そして、気付かれる事なくアンタに近付ける、そう思った』
これがあの時頭に閃いた作戦だった。
この作業着が見つからなかったら真っ正面から突っ込んで止めようと思っていた。
だけど、今のこの状況を見てそれは意味がない事に気付いた。
あたしが普通に現れても中田の元へは簡単に辿り着けない。
その前に中田側、もしくは獅鷹の人間が止めに来るだろう。
あたしは前回の中田と十夜の闘いで学んだ事がある。
“あの時”煌が言った言葉。
“俺等がお前の仲間を倒しても、最終的に決まるのは中田、お前が倒れた時だ。
どっちにしてもお前と十夜は決着をつけなきゃいけない。
だったら最初からお前を倒せば早く終わる”
この言葉を思い出した時、あたしは作業着を着て中田に近付こうと決めた。


