Ri.Night Ⅳ


「貴兄……」


……ねぇ、言ってよ。


いつもみたいに『凛音、何言ってんだよ』って言ってよ。


いつもの優しい笑顔向けてよ。



……なんで、


「なんで何も言ってくれないの!?」


なんでそんなに哀しそうな顔であたしを見るの!?


なんで……。



「貴兄!!優!!」


なんで、二人してあたしから目を逸らすの?


嘘だって言ってよ……。


ねぇ、貴兄、優音。



その表情が、無言が、余計に感情を昂らせて。


さっきの話が嘘ではないと、思い知らされる。




「どうして……」


その言葉と共に、涙が一筋、頬を伝った。



話し合うと意気込んでいたのは誰だったのか。


肝心な時に言葉が出てこないんじゃ何の意味もない。


言いたい事は山程あった筈なのに、今はもう何をどう言えばいいのか分からなくなっていた。


頭の中が混乱し過ぎて何も思い浮かばない。


『どうして?』という疑問の言葉しか浮かんでこない。


それしか、もう、浮かばない。







「……へぇ~」


静寂の中、突然聞こえたのはこの場にそぐわない愉しげな声。


直ぐ様その声の方へと視線を向けると、そこには扉に肩を預け、腕組みをしながら愉しそうに微笑んでいる中田がいた。