Ri.Night Ⅳ


何故“凛音”だと直ぐに気付かなかったのか。


それは、中田がその名を口にしなければ“凛音”だと判断出来ない格好をしていたからだ。



凛音の服装。

それは、紺色の作業着。


どこからどう見ても男物のそれは、凛音の体型が分からない程大きく、裾が幾つも折られていた。


ブカブカのズボンはズレ落ちないように縄で絞められ、頭には同じく紺地の帽子。


凛音のトレードマークとも言える長い髪はその帽子の中へと見事に収まっていた。


この姿を見て、凛音だと気付く者は恐らくいない。


それに、襲われた当事者中田と貴音、そして優音に遊大は変装前の凛音の格好を知っていた。


まさか変装をして乗り込んで来るなんて思いもしないだろう。


分からなくて当然、と言えば当然。




「お前、いつの間に……」


驚愕に満ちている中田の表情。


と言うより、信じられないとでも言いたげにしかめられていた。


地面へ沈められた怒りより、さらに上回る驚愕。


凛音が背後にいた事はそれ程までに有り得ない事だった。



『あたしはずっと此処に居たよ。ただ、アンタが気付かなかっただけ』



驚いている中田とは反対に妙に冷静な凛音。


今、此処に居るのはいつもの楽観的な凛音ではなく、どちらかと言えば“リン”そのものだった。


一人称は“あたし”。


だけど、声色は完全に“リン”。


それは意識的になのか。

それとも無意識なのか。


それは凛音本人にしか分からない。




 -客観的視点 end-