「やはり俺等だけでは潰せなかったか」
溜め息混じりにそう零した中田はポケットから右手を出した。
その手には携帯が握られていて。慣れた手付きで操作し、耳にあてる。
「お前等は終わりだ」
中田から放たれた言葉。
それは携帯の主に向けられたものではなく,真っ直ぐ十夜へと向けられている。
即ち、その言葉は十夜へ向けられたもの。
だが、中田の言葉を聞いても十夜は何の反応も示さなかった。
ただ中田を見据えるだけ。
焦りの表情を浮かべる訳でもなく、幹部に指示を出す訳でもない。
何もしないのだ。
中田の余裕綽々の態度、そして勝利発言。
普通なら狼狽えるところを十夜は表情一つ崩さない。
それが中田の逆鱗に触れた。
「骨の欠片も残してやらねぇ。くたばれ」
中田はそう言ったかと思うとスッと目を細め、にやりと不気味な笑みを浮かべた。
そして。
「──D、出番だ」
電話の主に向けてそう言い放った。
“D”
それは中田と貴音の“切り札”。
墜ちる寸前の鳳皇をさらに窮地へと追い込み、その羽根をもぎ取る。
それが“彼等”の役目。
「……D」
十夜が彼等の名を紡ぐ。
だが、それは所詮呼び名。
Dの正式名称は中田と行動を共にしている貴音でさえ知らない。
中田のバックで身を潜め、まだ誰の前にも姿を見せたことがない謎のチーム。
そのチームが今日、初めて公の場に出てこようとしていた。


