貴兄と優音の顔を見た途端、さっきまで絶望感に支配されていた感情が一気に逆流していくのが分かった。


何とも言えない感情が胸中を襲う。



信用、疑心、信頼、不安、戸惑い。



それらが頭の中でグチャグチャに混ざり合い、思考を乱していく。


もう、その感情を心の内に留めて置く事なんて出来なかった。



「……っ貴兄、嘘だよね!?貴兄が、獅鷹が中田と組むなんて嘘だよね!?」



貴兄を真っ直ぐ見つめ、震える唇で疑問全てをぶつける。


違うと言って欲しくて、まるで懇願する様に貴兄を見つめた。



「………」


けど、待てど暮らせど一向に貴兄からの返答はない。



……っ、なんで。


なんでなんでなんでっ!!


「貴兄!!」


静かな空間にあたしの悲痛な叫び声だけが響き渡る。


誰一人言葉を発しようとしない。


あたしだけが熱を上げ、まるで一人芝居をしている様に感じた。


それが余計に心を震い立たせる。



本当は今すぐすがり付きたいのに。

すがり付いて真実を聞き出したいのに。


それなのに、足が震えて力が入らない。

貴兄の元へ行けない。



「貴兄!!」


だから、何度も何度も貴兄を呼び続けた。


それでも貴兄は何も言ってくれない。