でも、仕方無いと思う。
だって、あたしは泣きながら鳳皇を出てきた。
十夜を傷付けて出てきたんだ。
何事もなかった様に平然と電話なんて出来る筈がない。
勿論、そんな事を言ってる場合じゃないって事ぐらい分かってる。
けど、怖いものは怖いんだ。
何か言われるかもしれない不安と、十夜の手を自分から離してしまった事への後悔。
それが心に突き刺さってどうしても前へ一歩踏み出せない。
それでも押さなければいけないのだと自分に必死に言い聞かせ、グッと拳を握り締めながら小さく頷いた。
……よし。押そう。
そう決意した時。
「分かったから離せよ!!」
突如耳に飛び込んできたのは優音の叫び声。
瞬時に優音に何かあったのだと悟ったあたしは直ぐ様階段の壁から身を乗り出した。
すると、さっきまでビルの中にいた筈の優音が道路の真ん中にいて、しかも数人の男達に引っ張られていた。
アイツ等!!
その男達はさっきカイと一緒にいた男達だった。
「そんなに強く引っ張らなくても逃げねぇよ!」
……っ、まさか奴等に見つかっちゃったの?
嘘……どうしよう!?
ってちょっと待って。
なんで優音逃げないの?
いつもならそんな奴等すぐに倒して逃げるのに。
あの優音が両脇を掴まれて大人しく連れて行かれているなんてどう考えても有り得ない。
一体どういう事?
……いや、そんな事を考えている暇はない。
このままじゃ優音が連れて行かれてしまう。
行かなきゃ。
優音を助けに行かなきゃ!
そう思うや否や、あたしは階段を駆け下りた。
一応一階に着いた所で一旦停止し、奴等の様子を窺う。


