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「あぁぁぁぁぁ身体中痛いぃぃー」


「自分が悪ぃんだろ。ホラ、腕上げろ馬鹿凛音」


「ちょっと!馬鹿って言わないでよ馬鹿優音!」


「お前も言ってんだろーが。ったく、んな事言うと放って行くぞ」


「ごめんなさいもう言いません」


「フン。最初からそうやって素直に腕上げろっつーの」


まるで勝ち誇ったかのように薄っすらと口元に笑みを浮かべた優音は、あたしの脇下に手を入れるとひょいと軽々持ち上げた。


そして、バイクの後ろに乗せ、慣れた手付きであたしにヘルメットを被せる。


「ウグッ!」


ちょ……、苦しい!死ぬ!


顎紐を締めてくれるのは有り難いけど、なんでそんなにキツく締めんの!?

お陰で一瞬息が詰まったじゃん!

しかも口から変な声出たし!


クッソー。絶対わざとだ。

そうとしか考えられない。



「もっとお姉ちゃんを労れ」


顎紐を緩めながらぼそりとそう呟くと、


「あぁ?何か言ったか?お・ね・え・チャン?」


それはそれは不気味な笑顔が返ってきた。


聞こえない様に小さく呟いたつもりだったけど、どうやら優音の耳にしっかり届いていたらしい。


「……フンッ」


反論するとまた倍返しされそうだから無言で顔を逸らす。


するとその直後、微かな震動と共にコツンと音を立てたあたしのヘルメット。


それが優音の謝罪だと直ぐに気付いたけど、あたしは顔を逸らしたまま知らんふり。


「ちゃんと掴まってろよ」


そんなあたしを見た優音はしょうがねぇな、とでも言う様にフッと呆れた表情で笑うと、あたしの両手を引き寄せ、自分の腹部に巻き付けてゆっくりとバイクを発進させた。