「……貴音達が受け入れなかったら?」


ハッキリと自分の意思を告げた十夜に煌は一瞬止まったが、直ぐにそう返答する。


「………」


その返答に今度は十夜が言葉を詰まらせた。


「………」

「………」


消えては訪れる、長い長い沈黙。


互いに視線を交わし合い、相手の真意を探る二人。


その静かな攻防に、室内の空気が徐々に研ぎ澄まされていった。





「俺はもうアイツを手放したくない」



先に口を開いたのは十夜で。


揺らぎ無いその声色はさっきと少しも変わらず、


「アイツを手放さない為なら説得でも何でもしてやるよ」


けれど、微かに揺れる十夜の瞳は未だかつてない程の哀しさと苦しみ、そして切なさが滲み出ていた。


十夜はそれを振り切るかのように立ち上がると、右ポケットから携帯を取り出し、「貴音に電話してくる」と言って寝室に向かって歩き出す。


「……アイツの言う通りだな。俺は凛音を哀しませる事しか出来ない」


ドアノブに手を掛けたまま静かに立ち止まった十夜は、そう自嘲気味に零すと振り返る事なく寝室へと消えていった。



「……俺、凛音がいなくなるなんて嫌だ」


重苦しい空気にポツリと落とされたのは陽の弱々しい声。


「折角帰ってきたのにまたいなくなるなんて……、そんなの絶対嫌だっ」


語尾につれて荒々しくなる声は陽の心情を十二分に表していて。


「俺もりっちゃんがいなくなるなんてやだよ……」


他のメンバーの本音もさらけ出させる。