「十夜、なんで今言うんだよ?煌の言う通り、今言ったら凛音ちゃんは──」


「遥香の事を知られた以上、全てを話す必要がある」


「ハッ、何だそれ。意味分かんねぇ。そんなの話さなくても幾らでも誤魔化す事出来んだろうが。話したらどうなるかお前にも分かってんだろ!?」


煌の鋭い突っ込みに十夜の瞳が激しく揺れる。


「煌、十夜もそう思ったから今まで誰にも話さなかったの」


「じゃあ何でだよ!」


「……これ以上アイツに隠し事をしたくないからだ。家の事もさっきの事も」


煌の問い掛けに応えたのは遥香ではなく十夜だった。


熱くなる煌とは反対に、妙に冷静な十夜。


そんな十夜に遥香を除く四人は訝しげに顔を顰める。


「……隠さなきゃなんねぇ事もあるだろうが。言ってもプラスにはなんねぇ。……これ以上アイツを哀しませんなよ」


そう言うと、煌は項垂れるように顔を伏せ、右手で側頭部を覆い黙り込んだ。





再び訪れた静寂。

先程と同様、全員の表情は曇ったままで、口は固く結ばれている。



「──隠した結果が“コレ”だ」



静寂を静かに破ったのは芯の通った十夜の声。


その声に煌をはじめ、壱達四人は険しい表情のままゆっくりと顔を上げた。


「もっと早く決断するべきだった。他の奴から伝わるぐらいなら俺は自分からアイツに話す」



揺ぎない声。

そして、真っ直ぐな瞳。


それは、


“もう、この決断を変える事はない”


そう言っているかのようで。


全員口を一文字に結んだまま何も発する事が出来なかった。