「別に拗ねてねぇし」
え、どこが?どこからどう見ても拗ねてるじゃない。
その証拠に、口を尖らせたままダルそうに首を回している。
その顔のどこが拗ねてないって?
「ゆ・う・と?」
認めなさいと言わんばかりにズイッと詰め寄ると、優音は罰が悪そうに顔を逸らし、「だってさ、」と言葉を零した。
「だって……なに?」
続きを促すように再度優音を覗き込む。
「……妃奈、メールとか電話する度に“リン”の話ばっかすんだよ」
「……うん?」
リンの話?
「この買い物袋受け取りに行った時だって“今日のリンくんインテリっぽくてね、すっごく格好良かったの!”って嬉しそうに言ってたし」
「………」
ちょ、妃奈さん!優音に何言ってくれちゃってんの!?
「終いには“リンくん大好き!”だってさ」
ちょ……!!
「ゆゆゆゆ優音くん!?」
影を背負い、ハッと乾いた笑みを零す優音にわたわたと慌てふためくあたし。
妃奈っ、妃奈さん……!
って今妃奈を呼んだら余計に悪化するか。
どうしたもんかと思っている内に優音の落ち込み度がマックスに。
「同じ顔してんのに男の俺じゃなくて男装した凛音の方が良いって何なんだよ……」
「ゆ、ゆうと?」
……ヤバイ。本格的に落ち込んでる。
ちょっと妃奈ー!優音に何言ったのー!!