ホン、モノ……?
「これってあの時言ってた……?」
今見たばかりの文字を頭の中で反芻した時、左方から聞こえたのは遥香さんの声。
その可愛らしい声にビクッと身体が揺れた。
「オイ、遥。“あの時言ってた”って一体何の事だ」
遥香さんの言葉に一早く反応したのは煌。
「えっと……雷さんのお店であの人達に言われたの」
それにしどろもどろになりながらも応える遥香さん。
「私を襲った理由は『ホンモノだからだよ』って」
「……っ」
遥香さんの言葉を聞いた瞬間、あたしはテーブルを見つめたまま小さく息を呑んだ。
脳裏に浮かぶのは“あの時”の光景。
そして、あの男の言葉。
あの男はあたしの問い掛けに対して厭らしい笑みを浮かべながら言った。
『ホンモノだからだよ』、と。
「凛音、お前他に何か言われたのか!?」
そして──
『蒼井 遥香は黒皇のモノらしいぜ?』
カイという男にも。
あの時は全くその言葉の意味が解らなかったけど“今”なら解る。
「凛音っ!」
──遥香さんが、十夜の“元カノ”だから。
だから奴等は遥香さんを“ホンモノ”と言ったんだ。
それは、十夜の気持ちが遥香さんに向いているという事?
「凛音!!り──」
「──その手、離せよ」
……え?
十夜があたしの右腕を引いた時、此処にはいる筈のない人の声がして。
その声に、どんなに呼び掛けられても上がらなかった顔がゆっくりと上がった。
「……っ、」
「それ以上凛音を追い詰めたらぶん殴ってやる」
「ゆう、と……?」
──視線の先には、あたしの片割れ、優音がいた。


