呆れながらも後ろを振り返ると、最後に一発、男達に向けておしりペンペンをしてやった。
当然、それを見た男達はさっきよりもさらに顔を紅潮させる。
そりゃあもう猿より真っ赤だ。
余程腹が立ったのか、口々に罵倒を浴びせにくる男達。
あたしからするとそれは負け犬の遠吠えにしか思えない。
「ちょ……!テメェ待ちやがれ!!」
「オイ!!」
その犬た……男達に満面の笑みを向けてさらりと交わすと、まるで感動的な別れ際の様に「バイバーイ!」と大きく手を振った。
そして、手を振ったまま爽やかにその場から駆け出す。
当然、満面の笑みはそのまま。
「オイ!ちょっと待てコラ!!」
「ナメた真似しやがって!!」
あらあら。御犬様達は吠えまくってますね~。
此処、山中だし。丁度良いじゃん。
そのまま野犬になっちゃえばー?
「ふふふーん」
上手いこと野犬達を撒いたあたしは気分上々。
スキップをするぐらい軽い足取りだ。
さて。これからどうしようか。
中田、獅鷹、鳳皇が此処にいるのは間違いない。
逃げ道が無く、追い詰められたが故、仕方なく屋根に飛び移ったものの、この先の策は無いに等しかった。
このまま屋根を走っていても抗争の場には辿り着けない。
どうにかしてこの工場内に入らなければいけないんだけど……。
行きあたりばったりなあたしにとって“考える”という事が一番厄介な事で。
今回も前回中田に捕まった時みたいに運良く物置小屋らしき建物があったらいいんだけど、今回ばかりはそんなに都合よくいかないだろう。
ここから見る限り、そんな建物何処にも見当たらないし。


