「ごめ……ごめんなさい……」
「凛音、落ち着け」
震える手で顔全体を覆い、理由も話さず謝罪し続けるあたしを十夜がそっと引き寄せた。
それでも身体の震えは止まらない。
頭の中には『自分が思い出していれば連中から“D”の居場所を聞き出せたのに』という後悔と、
『遥香さんは説明を聞いて直ぐにあの男の一言を思い出したのに』という思いが交差する。
何故遥香さんみたいに直ぐに気付かなかったのだろう。
遥香さんはあたし達の会話を少し聞いただけなのにそれを頭の隅でちゃんと覚えていた。
あたしはあの男とあんなにも言葉を交したのに。
それなのにあたしは遥香さんに言われるまで全く気付かなかった。
……全く、気付かなかったんだ。
「……凛音、少しずつでいいから説明してくれるか?」
「……っ、うん…」
……十夜、ごめんなさい。
そう心の中で謝りながら、あたしは自分の失態を皆に告げた。
十夜達が来るまでの出来事を全て話し終えると、張り詰めた空間に一時の沈黙が訪れた。
それを静かに破ったのは、あたしの肩を抱いたまま話を聞いていた十夜。
「凛音、お前のせいじゃない。だからそんなに自分を責めるな」
「でも……」
「それに、奴等を解放したのは俺だ。責任は俺にある」
「そんな……」
十夜は悪くない。
そう言おうと思ったら、十夜の親指に遮られてしまった。
軽く首を横に振る十夜の瞳は失態を告げる前と変わらず優しい。
けれど、その優しさが余計にあたしの心を苦しめた。


