遥香さんのその言葉を聞いて、ある光景が脳裏を過ぎった。
それは、“お前敵だったのか?”と言った男と初めて会話を交わした時の光景。
『オイ、女は何処にいる?』
『……あ?お前誰だよ?』
『俺も女を捜してる』
『……あ?あぁ、仲間だったのか。悪ぃ、俺まだ全員把握してなくて』
“仲間だったのか”?
“全員把握してなくて”?
男は何故そんな事を言った?
ゲームで集まった人間が何故“仲間”という言葉を使う?
何故“全員把握していない”と言う?
何故“お前、敵だったのか?”と問う?
それだけじゃない。
奴は“他の奴の情報では”と言って遥香さんの居場所をあたしに教えた。
他の奴?
“それ”が指し示す意味は……?
「……っ」
そんなもの一つしかないじゃないか。
「あの男は、“D”だった……」
そう。
あの男はその辺の不良なんかじゃない。
ゲームで集まった不良なんかじゃない。
あたし達の敵、“D”だった。
「じゃあさっき解放した奴等も……?」
「オイ、凛音どういう事だよ。……凛音?」
「あ、あたし……」
思い出してしまったあの光景に身体が小刻みに震え、滲む涙で視界が揺れる。
……あたしが、あたしが早く思い出していればアイツ等を逃がさなかったのに。


